(A)実際の印影でないのが残念ですが両方を見比べると第一に感じる事は全体的に①の方がスッキリとしているところです。(ぬけが良いという意味です) |
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会社実印の例を見てください。①の方が中枠の中にある役職名が太い線で作られています。しかし②の方が線と線の間が窮屈に感じます。なぜそう見えるのでしょう。 |
●これは第一に刀法のにおける技量の違いによるところにあります。印章を仕上げるときには印刀(彫刻刀)で文字の線の両側を削りますので刃物の切れ味がないと線の輪郭がガタガタになり押印したときの線が弱くぼやけてしまうからです。
●印章の構成法をおろそかにしているためです。印鑑はただでさえ小さい物で、特に会社実印の場合は小さなスペースに沢山の文字が入ります。それなのに更に文字を小さく配置した事で余計に窮屈になってしまいます。章法における基本的なセンスの問題です。
●字法(文字の形の選択)が悪い為です。篆書体(てんしょたい)には一つの文字に何種類もの結体(文字の形)があります。例えば文字数の多い場合は文字のスペースが限られてきます。その時にはなるべく字画(文字の画数)の少ない結体の文字を選ぶ等の工夫が必要です。
●章法(文字の配文・構成)による分間の調整(文字による線と線との間かく)、字割の調整(文字の粗密・繁簡による文字の大きさ)がおこなわれていないからです。スッキリと見えないのは線と線との間が②は極端に窮屈な所と不必要に広い所があるからです。
どうしても文章で説明すると専門用語が多くなりすぎるようですみません。
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(B)見た目では①に比べて②の方はなんとなく落ち着きがなく安定感が感じられません。どうしてでしょう。 |
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(A)に比べて難しい所です。(A)は言葉で説明できる部分も多いのですが(B)は専門的な事(字形・構成等)を除くと理論よりセンスや感覚の部分が重視されます。これが完全に分かれば私を含め全ての印章技能士も悩みがなくなります。 |
●印相体を例にとれば①と違い②は部分的にいたずらに線を動かしすぎて文字の重心(形も)を崩しているからです。書体にもよりますが不必要で極端な曲線は結果的に文字の安定感を阻害します。緩やかな曲線は文字の安定に役立ちますが不自然なものは全てを台無しにしてしまいます。
●角印(社印)を例にとれば②の方は枠と文字との太さの違いが少なくメリハリが感じられない為です。細い線を使うときにはそれを受け止めるだけのある程度の太さの枠の存在も大切なことです。
●角印の例ですが②は一本一本の線に勢いがないからです。会社実印や角印は細い線を使用する事が多いので文字の線質(線の切れ味)が非常に重要になってきます。実際の印影で無いのが残念ですが細い線だけに刀の切れ味がないと文字自体が貧弱になり全体の印象が弱く感じられます。
●篆書体を見れば分かりますが線の起終筆(線の始まりと終わり)がおろそかにされている為です。これは刀法が未熟な所と全体に神経が行き届かない所、一本一本の線を大切にしていない所からきています。
●文字の全ての転折(線の曲がり角)部分が同じようなカーブ(直角の角を丸くしたような)で丸ゴシック体みたいだからです。篆書というものは書(毛筆で書く文字)を基本にしていますので場所により力の入る所や緩やかに曲がる所が存在して全体を安定させています。
どんどん専門的な説明になってきましたが細かい所は省略して要は良い印影の雰囲気を感じとっていただければよいと思います。
※見本の実印・銀行印の印影はやや太めの線のものを使用していますが、これは画面で見やすいためで線が太い方が良いというものではありません。
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●あとがき● |
印章の説明は文章では難しく真意が正しく伝わっていないのではと不安になります。専門的な説明では一般の方には分かりにくくなると思いなるべく感覚(雰囲気)で見分けられるようにと書いていきましたがまだまだ不充分な説明になってしまいました。
●今後さらに時間をかけて加筆・修正をして充実させていきたいと思っております。 |