書体の選択



 書体選びに迷われました時に

いざ、印章を購入されるときに、どの書体にしようかな?自分の名前にはどの書体があっているのかな?と悩まれる方もいらっしゃる事と思います。

通常では、実印や銀行印の場合には95%以上の方が篆書体、もしくは印相体をお選びになられていらっしゃいます。認印では古印体が多く使用されております。

そこでこの度は、印相体と篆書体の2書体について実店舗での対応を参考にして好みという点について書いてみたいと思います。

また、古印体の文字の変化につきましても、なるべく分かり易いように書いてみました。


●篆書体と印相体(吉相体)の特徴●

印相体も篆書体も多くの場合、文字の土台は同じ結体(形)のものです。しかし、両書体を比較してみますと全体の雰囲気が大きく異なっていることが分かる事と思います。まず、印相体の特徴は太目の線で文字が過不足なく印面一杯に構成されてあります。

それに対して、篆書体は四隅にやや空間があり一文字一文字が独立し、印相体に比べますと、線もやや細目のものになっております。

篆書体(てんしょたい) 印相体(いんそうたい)


 

 
 金田正一 鶴田浩二   森 進一   福田武夫



お客様の感覚

印章にしろ何にしろ基本的な技法(文字の形、構成法 刀法等)というものは大切ですが、それ以外の部分では好みという要素が多分に含まれております。

実店舗でお客様に書体をお選びいただいているときに、その方の印影に対する好みというものがおぼろげながら分かってきます。

印相体をお選びの方は、太目の線で過不足なく構成しておりますので、どっしりとした重量感と印影全体に強く存在感が感じられるものを好まれるように思われます。

それに対し、篆書体を好まれる方は、一文字一文字が独立しておりますので文字が分かりやすく線がスッキリとして印影全体が明るく繊細な感じがするのを良しとされておられるように思います。

全体的に感じますのは、印相体を好まれる方には、篆書体の印影は物足りなく感じられるように思われます。逆に篆書体を好まれる方には、印相体の印影は重苦しく感じられるように思われます。

一例をあげますと、印相体のやや太目の線に対しまして、好まれる方は強くて堂々として良いと言われますし、嫌われる方は、重く感じられるように思います。

また、文字が印面一杯に構成されてあることでも、印象が強く存在感を感じられる方もいらっしゃいますし、全体に窮屈に感じられる方もいらっしゃいます。

篆書体のやや細めの線に対しましても、好まれる方はスッキリとして明るくて良いといわれますし、嫌われる方は、印影の印象が弱く感じられるように思います。

また、四隅に適度の空間があることでも、全体に余裕があると感じられる方もいらっしやいますし、充実感に欠けると感じられる方もいらっしゃいます。

文字に関しましても、一般的に印相体は文字が読みにくく、篆書体は読みやすく感じられるようです。ただ、読みやすい方が良いという方と読みにくい方が良いという方もいらっしゃいます。

このように、お客様一人一人により印章に対する感じ方も色々とあります。あくまで好みの問題と思いますので、ご自身の好みでお選びいただかれるのが一番良いと思います。

実店舗にて直接お客様と対話して感じた事を書いてみました。専門的な事はあまり書ききれませんでしたが、印章をお選びになる上で参考になればと思っております。



●古印体の特徴(認印)● 

古印体は、文字の結体や配置が同じ認印でも印影の表情を変化させることが出来ます。

今回は、わかり易いように「大田」の認印を例題にして説明をさせていただきます。①の印影をを土台にして、少しずつ雅味をつけて変化させております。

古印体では味わいを演出する為に、文字の線を欠かしたり、線に食込みを入れたりすることがあります。このような方法を、文字の線に雅味(がみ)や寂(さび)・味(あじ)を加えると言われます。

説明につきましては、①~⑤の良否やどれが正しい間違いではなく、このような方法もあるということだけをご理解いただけましたらと思います。

なお、印影につきましては当店印章彫刻担当者が彫刻したものを使用しました。

古印体の更に詳しい解説につきましては、「古印体」で検索されますと、沢山のサイトが見つかることと思います。

①    大田の認印を古印体にて作製いたしました。

通常認印の古印体らしく、線を緩やかな曲線にして線の強弱(太細)と交差部分に墨だまりをつけまして左の印章を彫刻いたしました。 

これはこれで素直で作為や飾り気けもなく好感の持てる整いの良い古印体だと思います。 (原寸 12㎜丸)
 ②は「大」の右のはらいの線を欠かしてみました。

このような方法で、雅味(がみ)や寂(さび)・味(あじ)を加えることもあります。

好みの問題もあり、これにより、①に比べ「大」の文字に雅味が出たかどうかは不明です。
③    ②から更に「田」 の左上を切りました。失敗して線を欠かしたわけではありません。少し変化を加えたつもりです。

左上の線を切った事により、「田」の中の空間が文字の外に逃げて、窮屈感が消え広々とゆったりとした感じになるのではないかとも思いますが如何でしょうか?
④  ③からの変化は、「大」の横線の左側に少し「食込み」を入れてみました。

これにより、単調でありました「大」の横線に、少し雅味を加えたつもりです。
  ④からは、「田」の2本目の線の左側に少し「食込み」を加えてみました。

こちらも単調な横線に微妙な雅味を加えたつもりですが全体の味わいが更に出たのでしょうか? 


 説明の補足

今回はわかり易さを重視して「大田」の認印で説明させていただきました。上の①~⑤の印影は違いがありますので、別々の印鑑として登録されても照合は充分可能です。

雅味を出すことの利点は、単調な文字や線に味わいを演出する為だけではなく、印章の使用目的でもあります偽造防止や印影の照合が容易になるという点です。

今回の「大田」のように画数の少ない文字では、①の方法だけでは選択肢も少なく、あまり変化する事が出来ません。

雅味を加えることにより同じ土台の印影でも違う印影に見えますので、印章の本来の役割でもあります「唯一無二」の原則に適しているのではないかとも思います。

文字を欠かしたり食込みを入れる箇所は常に一定ではありませんので、印影に対し更に選択肢を増やすことが出来ます。

このサイトにも、私の線を欠かした競技大会等の古印体の作品を掲載しております。良い例ではないかもしれませんが、このような方法もあると言うことだけをご理解いただけましたらと思います。

ただ、印章の印面(彫刻面)は小さいものですので⑤の変化で止めました。これ以上雅味を加えますと、作意がすぎる感じになり、あまり良くないのではないかと思いました。

また、文字の線を欠かすことを嫌われる方も多くおられます。良い悪いではありませんので、個人の好みでお選びいただくのが一番良いのではないかと思います。


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◆◆当ショップオリジナル◆◆


●(1)職人の目で見た印章ご購入のアドバイス。お買物の際には参考にして下さい

●(2)あなたのセンスをチェックしてみませんか?問題形式による印章構成法です

●(3)良い印章とは?印影をもとにして一般の方にも分かりやすく説明しております

●(4)ハンコ職人の技能グランプリ初出場4日間の奮闘と反省をこめた体験記です

●(5)ハンコ職人のひとり言です。普段なにげなく思っていることを書いてみました

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